柿渋

秋の味覚として知られている柿。普段我々が口にしている柿は甘柿で、干し柿の原料として使われるのは、渋柿です。 渋柿は干し柿としてしか使いようがないと思ってしまいがちですが、そんなことはありません。 渋柿は柿渋の原料として昔から我々の生活に役立っています。柿渋は、染め物の染料として、塗料として、漆を塗る前の下塗りに使われたりしています。 もちろん、柿渋の利用法はこれだけではなく、それ以外にも多くの用途に使われています。

●柿渋の歴史

柿渋の歴史は長く、柿渋のことが書かれた最も古い文献は10世紀頃のものであり、その文献には、漆の下塗りに用いられていたとかかれています。 今ではすっかり主流となっている衣服への柿渋の使用が始まったのは、平安時代で、主には下級武士が着ていたといわれている柿衣が始まりと言われています。 染料として主に使われている柿渋ですが、染料として以外の利用方法もあり、特に漢方薬としての効果に優れています。 火傷や霜焼、血圧降下や解毒などに効くといわれており、さかんに利用されていました。 また、剣豪として有名な宮本武蔵は多くの戦いに、柿渋で染めた鉢巻をして挑んでいったそうです。

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柿渋の製法

地方によって違いますが、渋柿の中でも最も渋みの強い品種である天王柿や山柿などを使います。 青い柿を最も渋みの強い時期といわれている8月頃に採集します。 採取してから日にちを置くと果肉が変質してしまい、柿渋を搾りにくくなるので、その日のうちに砕いて搾りろ過します。 因みに、ここまでの作業は1日で行います。 この搾り汁を自然発酵させた後、長期にわたって保存します。長期間保存することによって、次第におり(澱)が沈澱し、それを除いた上澄み液が柿渋となります。 これを1年から3年以上かけて、ねかし熟成してつくります。柿渋は、古いものほど上質の柿渋ができるとされます。 昔は樽などで醗酵させていましたが、現在はホーローのタンクなどで作業が行われています。搾る手間より、長期保存による熟成の管理が大変です。 渋柿を搾った直後は緑色の液体ですが、時間とともに茶色くなっていきます。これが、柿渋の色なのです。柿渋には、化学薬品などの添加物は加えません。 昔、柿渋を大量に製造していた時期に天候のせいで渋柿が不足した事があり、シブオールをまだたくさん含んでいる渋柿の搾りかすに水を加えて再度搾った2番渋を作る事もありましたが、現在では、2番渋を作ることはなく、市場に出回っている柿渋は全て1番渋です。

柿渋の成分と用途

柿渋の主成分とされているのは、柿渋タンニンとシブオールです。 この2つの成分を多量に含んでおり、その結果、柿渋独自の効果が得られます。 また、柿渋を作るうえでの発行させる作業の中で、酢酸や酪酸の臭気を帯びた成分も含まれています。 もちろん、この酢酸や酪酸にも多くの効果があります。

柿渋で染めた袋で、酢と醤油を作る

柿渋に含まれるシブオールは、強い防腐効果があり、水に関係する仕事に多く使われています。 まず、酢や醤油といったほぼ水と変わらない物を製造するのにも使われていました。 酢や醤油は、もろみと呼ばれる原料が醗酵して固形化したものを絞って作ります。 この絞る作業のときに、柿渋で染めた柿渋の袋を使うことが多かったそうです。その柿渋で染められた袋は、醤油袋とも呼ばれていたそうです。 最近では、柿渋の袋を使うことは少なくなりましたが、現在でも清澄剤として利用されています。

柿渋を魚網に塗る

柿渋には、防腐効果だけではなく、防水効果、補強効果もあります。 ですので、昔は魚を採るための魚網や釣り糸を染めるためにも柿渋は使われていました。 昔は、魚網を編む漁師さんの姿同様に、魚網などに漁師さんが柿渋を塗る光景が見られたそうです。

柿渋を漆の下塗りに使う

先ほどから何度も書いているようですが、実は、柿渋が漆の下塗りに使われていたということは、あまり知られていません。 柿渋が漆の下塗りとして利用された理由としては、柿渋が利用されていた時代においては、漆の方が柿渋よりも高価であったことや、漆よりも柿渋の方が扱いが容易だったことが主な理由といわれています。 ですが、今では柿渋による下塗りも減っているそうです。

柿渋を和紙の補強に使う

柿渋には、補強効果もあるため、さかんに和紙に柿渋を塗り、和紙の強化に用いられていました。 友禅や小紋などの型紙にも利用されており、柿渋を使った和紙の中でも伊勢型紙などが有名です。

柿渋を番傘作りに使う

この柿渋の補強効果と、魚網などに用いられている防水効果から、日本特有の傘である和傘(番傘)にも使用されています。 柿渋は、番傘の竹の骨の部分に利用されることが多いです。 また、番傘の雰囲気を損ねないためにも、あまり発色をしないように新渋と言われる絞りたての柿渋が使用されます。

柿渋を使って和紙で衣服を作る

柿渋には、まだ他にも効果があり、なんと防虫効果まで持ち合わせています。 その理由から、柿渋を塗った和紙を加工した一部のものは、衣服として利用されていました 。厚紙に柿渋を塗って乾燥させた後、もみ上げて柔らかくし、露に晒して柿渋の臭いを取り衣服にしたと言われています。 この柿渋を使った和紙の衣服は、本来は律宗の僧侶が主に使用していたのですが、後々に一般でも利用されるようになり、一時にはファッションの分野で流行したといわれています。

柿渋で団扇を作る

焼き鳥を作るときに仰いでいる団扇にも柿渋は利用されています。もちろん、今でも団扇には柿渋は使用されており、柿渋を使用した団扇は強度があるため、丈夫で長持ちします。この柿渋を使った団扇は、渋うちわと言われており、今でも多く使用されています。  渋柿はいわずとも知れ渡っているように、染料として多く使用されています。 その歴史は長く、色合いはもちろんのこと、その機能性も優れています。 今でも、染料としてその微妙な色合いが柿渋の独特の雰囲気をかもし出しており、その人気は今もなお続いています。

柿渋は自然の塗料

最も注目すべきなのは、塗料としての柿渋です。 お酒を造るため、番傘の補強のため、そして、和紙を衣服にするためなどに多く用いられた柿渋は、塗料としても大きな効果を持っています。 防腐、防水、防虫、補強などの効果を持っているだけではなく、最近問題となっているホルムアルデヒドの吸着効果も学会で発表されているそうです 。また、柿渋は、渋柿から作った自然の塗料ですから、体に毒になるということはまずないという点で安心できる塗料といえるでしょう。

柿渋は民間治療薬

柿渋は、染め物、塗料として使われるだけでなく、民間治療薬(漢方薬)として昔から多くの人々の間で利用されてきました。 飲み薬から塗り薬までの多くの薬として利用されており、特に医者などがいなかった土地では家庭の常備薬として多くの家庭に保管されていました。 また現代では、服用としては高血圧、脳卒中などに効果があるといわれ、塗り薬としては火傷、しもやけ、虫さされ等に利用されています。 更に現在では、薬としてだけではなく、化粧品としても利用されています。

 

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